催物案内

塵穴の記

 

 

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本日はご紹介するのは、信楽茶碗 銘 万力 です。桃山期から江戸期にかけての作と思われます。川上不白、表千家6代覚々斎、および13代即中斎の箱書があります。濃茶席の替えとしてお出ししました。

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腰は真円に近く、口は楕円形になっています。高台や口縁の造りからして非常に作為的であり、茶の湯を意識した作りであることは明らかなのですが、ここで一つの疑問がわきます。果たしてこの茶碗の正面はどこなのか、ということです。信楽の場合、当然に火前(写真の部分)であることが多いわけです。しかし、この茶碗、火前を正面とすると“たて長”になります。正面を外して茶を飲む、とすると楕円の広い部分で飲むことになりますが、これは“飲みやすさ”の点からするといささか問題があります。また、畳の上に茶碗を置き対峙すると、“たて長”には不安定さも感じられます。すると“よこ長”が正しいのか。しかし、そうするといま一つ景色の面白さに欠けてしまいます。そこで、目線を茶碗と同じ高さまで下げると一つのことに気がつきます。火前を正面に口縁を眺めると、手前の縁から見え隠れする向こう縁が、他の方向から眺めるよりもより一層、表情豊かに現れます。やはり作者は、火前を正面とするべく、成形、焼成を行ったと思われます。茶碗のどこに口をつけ、茶を喫するか、という点については時代や流派による変遷があると考えられますので、一概には言えませんが、少なくとも、こうしたことに思いを馳せることができるのも、実際に手に取り、茶を飲むことで可能になると思います。

当館では秋にも所蔵品を用いた茶会を企画しております。ぜひご興味のおありの方はお問合せ下さい。

尚、この作品は現在展示いたしておりません。特にご覧になりたい場合は当館までご連絡ください。できる限り対応させていただきます。

 

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